RECKLESS
(レックレス)

BRYAN ADAMS

Reckless

One Night Love Affair
She's Only Happy When She's Dancin'
Run To You
Heaven
Somebody
Summer Of '69
Kids Wanna Rock
It's Only Love
Long Gone
Ain't Gonna Cry

1984年
A&M Records, Inc.
Art Direction: Richard Frankel & Chuck Beeson
Album Design: Chuck Beeson

Photo by Hiro

80年代の前半はロックとテクノロジーの融合が進んだ時代だった。デジタル・シンセサイザーやシーケンサーの導入が進み、70年代に名を成したアーティスト達も時代への適応と個性の埋没という相反する命題に悩まされていた。そして60年代のビートルズやストーンズといった"ロックンロール"ではない"ロック"の1stジェネレーションを聞いて育ったキッズ達が自らアーティストとして活躍するようになる。ブライアン・アダム ズもその一人である。

カナダ出身のブライアンは、80年にレコード・デビューし、3枚目のアルバム「カッツ・ライク・ア・ナイフ」で注目を集めた後、本アルバムで世界的にブレイクする。ギミックのないストレートなロック・サウンドと、ハンサムではないが少年の面影を残したルックスで男女に跨る広い人気を獲得した。

このアルバムからは5曲がシングル・カットされ、 いずれもヒットしたが、中でもハスキー・ボイスで甘く歌い上げるバラード"Heaven"は全米No.1の大ヒットとなった。

"君こそ僕が望むもの。君が僕の腕の中にいることが未だに信じられない。ここは天国だ。"
(Heaven/written by Bryan Adams & Jim Vallance/高崎勇輝訳)

このアルバムの後、ブライアンは甘さを排除したストイックなアルバム 「イントゥ・ザ・ファイア」をリリースする。その手応えは悪くはなかったものの、この「レックレス」程ではなかった。そしてその後映画「ロビン・フッド」のサウンドトラック用に制作された甘いバラード"I Do It For You"が再び大ヒット、その後もサントラ絡みのヒットがいくつか出てしまったことで、ブライアンは苦しめられることになる。それはビリー・ジョエルが「ナイロン・カーテン」でヴェトナム問題に取り組み、ジャクソン・ブラウンが80年代のアルバムでアメリカの対外政策に問題を提起した時と似ているかもしれない。シンガー・ソングライターとして社会問題への取り組みは必ずしも評価されはしなかった。そして90年代以降はアメリカよりもイギリスを始めとするヨーロッパでの評価の方が高くなっている。

本アルバムはまだそんな葛藤に悩まされる前のことである。当時一世を風靡していたエンジニア ボブ・クリアマウンテンによるサウンドはハードながらもクリアである。しかし、"Summer of '69"はまるでブライアンがこの後抱え込む苦しみを知っていたかのような唄だった。

"初めて手に入れたギターは5ドル10セント。血豆が出来るまで弾き続けた。1969年の夏だった。
学校の仲間とバンドを組んで、すごく練習したよ。でもジミーが辞め、ジョディは結婚した。
そんなに上手くいくはずはなかったのさ。

振り返ってみると、あの時は夏がいつまでも続くと思っていた。 もしできるなら、あの頃に帰りたい。人生最高の時だった。

時は移り行き、永遠に続くものなど何もない。 時々あの古いギターを弾いてみて思うんだ。 どうして君とうまくいかなくなってしまったんだろう。

家の前で君は僕に、僕らの愛は永遠だと言ったね。でも君が僕の手を握っていた時、僕らには今しかないとわかってたんだ。
あれが人生最高の時だった。 69年の夏。"  (Summer Of '69/written by Bryan Adams & Jim Vallance/高崎勇輝訳)

僕はチャリティ・コンサートで、ポール・マッカートニーやエリック・クラプトン、エルトン・ジョンら彼のアイドルだったアーティスト達と嬉々として演奏していたブライアンを覚えている。
あの頃、僕も毎日ギターを弾くこと、そして恋をすることで一生懸命だった。
別にセンチメンタルになる訳じゃないのだけれど、あの頃の一途さを懐かしく思い出すのだ。1年が不思議な位長かった頃のことを。
 

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