EVERY PICTURE TELLS A STORY
(エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー)

ROD STEWART

Every Picture Tells A Story

Every Picture Tells A Story
Seems Like A Long Time
That's All Right
Tomorrow Is A Long Time
Maggie May
Mandolin Wind
(I Know) I'm Losing You
(Find A) Reason To Believe
 

1971年
Mercury Records
Design & Illustrations: John Craig
Art Director: Des Strobel

僕にとってのロッド・スチュワート は、マーキュリー時代の印象が強烈なシンガーである。サウンドのバランスは悪く、洗練されているとはとても言えないのだけれど、彼のしわがれた声と組み合わされた時に、煙草の煙の立ち込める店でライヴを聞いているような、親密感を感じるのだ。 スピーカーからウィスキーの匂いがしそうな、そんな音は一人で聞くのに限ると思う。 そして僕は遠い70年代のロンドンに想いを馳せるのだ。

ロッドの唄は良くも悪くもストレートに愛を唄っている。僕自身はそういうタイプではないのだけれど、時にはそういう自分にないものに憧れを抱くことがある。

"夜は昼のもう一つの顔に過ぎないという。 でも君が光を求めたことがあるなら、朝を待ちわびるのがどれ程永く思えるか知ってるだろう。夜はいつまでも続くような気がしないかい。いつまでも、いつまでも、そう、いつまでも。

辛い時はいい時のもう一つの顔に過ぎないという。 でも君が辛い時を過ごしたことがあるなら、いい時を待ちわびるのがどれ程永く思えるか知ってるだろう。この辛さはいつまでも続くような気がしないかい。いつまでも、いつまでも、そう、いつまでも。

俺を救ってくれよ。 この時がいつまでも、いつまでも、そう、いつまでも続くような気がするんだ。"
(Seems like a long time/written by Teodore Anderson/高崎勇輝訳)

"俺は気の利いたことは思いつけやしない。だから、うまく言えないけど。 俺の持ってるこのわずかなもの全てはお前のものさ。スティール・ギターは別だがね。ハッ ! だってお前は弾けないから。 でも、いつか弾き方を教えてやる。俺はお前を愛してるから。"
(Mandolin wind/written by Rod Stewart/高崎勇輝訳)

そんな訳で、僕は時々このアルバムや「ガソリン・アレイ」といったロッドの初期の名盤に耳を傾ける。マーティ・クィッテントンのアコースティック・ギターは、そのざらりとした手触りがバンドの音に厚みを与え、そしてロン・ウッドのギターがルーズに空間を分断していく。 バンドの幸せな瞬間である。もちろん、こんな感じでいつまでもいられる訳はないのだが。

このアルバムの曲でもっとも良く知られているのは、"Maggie May"である。この曲の大ヒットは、当時ロッドとロンが在籍していたバンド「フェイセズ」以上に売れてしまい、バンドとロッドの間に軋轢を生むもととなったそうだ。この曲はロッドのしわがれた声があってこそ光るもので、トラッドのテイストを加えた演奏とあいまって、今もその輝きを失っていない。

"そろそろ教科書をまとめて学校に戻るか、それとも親父のキューをくすねてビリヤードで身を立ててもいい。 あるいはどっかのロックンロール・バンドに入った方がいいかもしれない。 マギー、俺はあんたと出会うべきじゃなかったんだ。 あんたはおいらを骨抜きにしちまい、そして俺は喜んで そうなってた。あんたは俺を骨抜きにしたけど、愛してるんだ。"
(Maggie May/written by Rod Stewart & Marty Quittenton/高崎勇輝訳)

ロッドはこの後、アメリカに渡り、そこでは「ゴージャス」なシンガーとして"Sailing"等のヒットを飛ばす。もちろん、多くのアーティスト同様に停滞期を迎えることもあったが、今でも唄い続けている。僕は渡米以降のロッドをそれ程熱心に聴いている訳ではないけど、MTV「アンプラグド」でリラックスして唄う彼や、スタンダード・ナンバーを「ゴージャス」に唄う最近の彼を見ると嬉しくなる。そうさ、あんたはいつまでも歌い続けてくれ。
そして僕はまた"Maggie May"を聞くことにする。

 

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