RUNNING ON EMPTY
(孤独なランナー)

Jackson Browne

Running on emputy

Running On Empty
The Road
Rosie
You Love The Thunder
Cocaine
Shaky Town
Love Needs A Heart
Nothing But Time
The Load Out
Stay

1977年
Elektra/Asylum Records
 

ジャクソン・ブラウンは本来「言葉」を重視する考え込みがちなシンガーである。しかし、70年代半ばに、当時西海岸で一世を風靡していたプレイヤー達に囲まれ、強力な「ロック」の名盤を生み出した。それが「プリテンダー」とこのアルバムである。

77年のライヴ・ツアー中に製作されたこのアルバムは、既発表の曲が入っていない。新曲をステージで、ホテルの一室で、そしてロード中のバスの中で演奏した、彼の旅の記録である。 プレイヤーはラス・カンケル、リー・スクラー、ダニー・クーチマー、クレイグ・ダージといった「セクション」の面々に、彼の盟友デイヴィッド・リンドレーが参加している。


タイトル曲 "Running On Empty"でのリンドレーのスライド・ギターは、まさに天翔るという言葉が相応しい名演だと思う。映画「フォレスト・ガンプ」でガンプがアメリカの大地を疾走する時に流れるのがこの歌なのだ。

"タイヤの下を通り過ぎていく路面を見つめていた。 窓の外に流れる夏の草原に、過ぎてきた歳月を重ねていた。
'65年、17歳の僕は101号線を走り続けていた。 何処を走っているかなんて知るもんか。ただ走り続けるんだ。

走り続ける。何のためでもなく。走り続ける。ひたすらに。太陽に向かって走り続けるけど、決して追いつくことは出来ないのさ。"
(Running on empty/written by Jackson Browne/高崎勇輝訳)

シンガー・ソングライターであるジャクソンが、このアルバムでは他人のペンによる曲も唄っている。それはパフォーマーとしての意識の表れなのではないだろうか。 この頃、彼はボニー・レイットらと原発 の廃止をアピールするコンサートを開催し、その映像が「NO NUKES」として残されている。 ここで大観衆を前にこの曲を唄うジャクソンの歌声はどこまでも力強く響き渡る。

もう一つこのアルバムで特筆すべきなのは、エンディングでスタッフと共に旅に明け暮れる日々を歌った "The Load-Out"である。

何処までも広いアメリカ大陸をバスで移動し続けるのは、自分を磨り減らす旅でもある。その有様をジャクソンは赤裸々に歌う。

"バンドの連中はバスの中で出発を待っている。僕らは夜通し次のコンサートがあるシカゴに向かう。それともデトロイトだったかな。あんまり沢山のショウがあるもんだから。旅の毎日では、どの街も同じに見えてくる。ホテルの部屋で時間を潰し、ステージの裏をぶらつく。照明がついて、みんなの歓声が聞こえてくると、ようやく何をしにきたのかを思い出すのさ。

君たちは僕らを動かすパワーを持ってるんだぜ。大人しく座っててもいいけど、もっとノッて唄おうぜ。何をしたってかまやしない。
だって、明日の朝君らがこの街で目覚める頃には、僕らは千マイルも彼方に行っちまってるんだ。
(Load-out/written by Jackson Browne & Bryan Garofalo/高崎勇輝訳)

静かなピアノで始まる唄に、バンドの音が加わり力強さを増し、最高潮に達したところで、ゾディアックスの「ステイ」に繋がっていく。 この曲は元々ラブソングなのだが、ジャクソンはこれを「もう少し一緒にいてくれよ。プロモーターは気にしないさ。あと一曲!」と 、ファンとバンドの関係に変えて歌っている。粋である。
コーラスのローズマリー・バトラーがパンチの効いたソロ・パートで観客を沸かせ、そしてデイヴィッド・リンドレーまでもがファルセットでイカれたヴォーカルを聞かせる。 そして演奏の続く中、ジャクソンはステージを去っていく。 また次の場所を求め、彼はやみくもに走り続ける。 それは太陽のように、決して 辿り着けはしないのだけれど。

 

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